平成レトロを視覚的に強く印象づける要素の一つが、
**フォント(文字)**である。
色やイラスト以上に、
フォントは「時代の空気」を無意識のうちに伝える。
同じ言葉でも、どのフォントで書かれているかによって、
受け取られる印象は大きく変わる。
平成レトロのフォントには、
洗練よりも分かりやすさ・親しみやすさ・勢いが色濃く残っている。
このページでは、平成期に多く使われていたフォント表現を、
タイポグラフィの視点から整理する。
平成フォントの前提にあった環境
平成期は、フォントを取り巻く環境が大きく変わった時代である。
- パソコンの普及
- DTPソフトの一般化
- 個人でも文字デザインが扱える環境
それまでフォントは、
専門的な現場で扱われるものだったが、
平成に入ると、誰でも選び、使える存在になった。
この変化が、
平成レトロ特有のフォント文化を生み出している。
「読みやすさ」より「伝わりやすさ」
平成レトロで使われていたフォントは、
必ずしも読みやすさを最優先していない。
- 太い
- 主張が強い
- 文字のクセが分かりやすい
これらの特徴は、
文章を読むためというより、
一瞬で意味や雰囲気を伝えるために選ばれていた。
特に、
- ロゴ
- 見出し
- パッケージ表記
では、
文字そのものが装飾や記号として機能していた。
丸みのある文字が多用された理由
平成レトロのフォントには、
全体的に丸みを帯びたものが多い。
- 角が少ない
- 柔らかい印象
- 親しみやすい形
これは、
見る人に威圧感を与えず、
誰でも受け入れやすい印象を作るためである。
特に、
- 子供向け
- 若者向け
- 日用品
といった分野では、
丸文字系のフォントが頻繁に使われていた。
ロゴに見られる平成的な文字表現
平成期のロゴは、
抽象的なシンボルよりも、
文字そのものに情報を詰め込む設計が多い。
- 読めば内容がすぐ分かる
- 雰囲気が文字から伝わる
- 装飾がそのまま個性になる
現代のロゴが、
削ぎ落としや抽象化を重視するのに対し、
平成のロゴは「説明するロゴ」だったと言える。
そのため、
今見ると少し情報過多に感じられるが、
当時としては極めて合理的な選択だった。
フォントの混在が生んだ独特の空気
平成レトロの文字表現には、
フォントの混在がよく見られる。
- 見出しと本文で極端に違う
- 和文と欧文の組み合わせ
- 統一感より勢い
これはルール違反ではなく、
実験的で自由な姿勢の表れだった。
フォント選びがまだ定型化されていなかったため、
「とりあえず使ってみる」という感覚が許されていた。
その結果、
雑多だが印象に残る文字表現が多く生まれている。
なぜ今、平成フォントがレトロに感じるのか
現在のデザインでは、
- フォント数を絞る
- 可読性を最優先する
- ブランドトーンを厳密に管理する
といった考え方が主流になっている。
そのため、
平成期の
- 主張が強い文字
- 装飾的なフォント
- 混在したタイポグラフィ
は、
一目で「昔の感じ」と認識されやすい。
フォントは時代の感覚を
最も正直に映す要素の一つであり、
平成レトロを語る上で欠かせない指標となっている。
Q & A
Q1. 平成レトロのフォントに決まった種類はありますか?
A. 特定のフォント名よりも、丸み・太さ・主張の強さといった傾向が特徴です。
Q2. なぜ丸文字が多かったのですか?
A. 親しみやすさや分かりやすさを重視していたためです。
Q3. フォントの混在は意図的だったのですか?
A. 明確なルールよりも、試行錯誤や自由な選択の結果として生まれています。
Q4. 現代でも平成風フォントは使われますか?
A. 意図的にレトロ感を出す場面では、参考にされることがあります。
Q5. フォントはなぜ専門性が高い要素なのですか?
A. 見落とされがちですが、時代性や文化背景を最も強く反映する要素だからです。


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